修験道とは

“修験道とは、山に入り修行を積むことで特別な力(験力)を得て、それを使って里に住む人々の宗教的ニーズに応えることを目的とした日本独特の宗教です。この修行者のことを「修験者(しゅげんじゃ)」または「山伏(やまぶし)」と呼びます。
修験道は、「山岳信仰」を基盤にして、仏教、特に「密教」を初め、神道、道教、陰陽道、シャーマニズムなどの要素が習合して成立したと言われています。

日本人は、古来、山岳を、死者の住む「異界」、頂上を神が来臨してくる神聖な場所とするなど、「山岳」への強い畏怖と信仰を培ってきました。日本人にとって「山」というものは、特別なものであったと言えます。
平坦な土地の少ない日本では歩いていけば必ず山に出会います。山は人の住む「里(さと)」との境界でした。山の向こう側は別の世界であり、山は世界を隔てる神秘的な存在であったと考えられます。

6世紀半ば頃、日本に「仏教」が伝来したとされています。
「仏教」では、修行によって「悟り」を得ることができるとされています。この仏教の修行と古来からの山岳信仰などが組み合わさることで、山に篭って修行することで、超自然的な力を得ることができるという信仰が考えられたものと思われます。
仏教の一派である「密教」には「曼荼羅」というものがあります。これは主尊を中心に諸仏の集会(しゅうえ)した様子を描いた密教的宇宙観の表現です。修験道では、修行の場である山そのものを「曼荼羅」と重ね合わせて実践を行ってきました。山で修行をするということは、そうした神仏の力を自ら体得するという意味も持っています。

仏教では、山そのものを信仰の対象とはしていませんが、極めて日本的な山に対する特別な思いに仏教や密教の考え方が重なり合うことで、修験道というものが出来上がり、修験者は、山で修行することにより得た力で、豊作や健康など、庶民の現世利益的な願望に応えようとしたと考えられます。