京都府の北西部、綾部市を横断する由良川のほとりに、「学びの寺」と評される宿坊があります。
川沿いの細道から石段を上がって訪れる那智山正暦寺は、
天慶5(942)年に空也上人の手による観音像を祀ったのが始まりとされ、寺号は雨乞い祈願の効験により、
一条天皇より賜与されたもの。観音像は33年に一度ご開帳される秘仏で、
ほかにも歴史的文化財、枯山水庭園など見どころの多い寺院です。
その境内の一角、由良川を見下ろす場所にあるのが客殿として使われていた小雲閣で、
ここが宿坊として、一日一組を受け入れています。築100年ほどという純和風の別宅は、
襖絵や天井、調度品などにも歴史を感じる佇まいが特徴的。窓辺のいすに腰掛ければ、
穏やかな由良川も一望できます。
夕食は、地元綾部の牧場で育った黒峰シャモの御膳か、
季節の山菜などを盛り込んだ精進料理。翌朝は和食か精進料理から選べます。
宿泊者はここでさまざまな体験ができるのですが、そのコンテンツの豊富さが「学びの寺」と呼ばれる由縁です。
坐禅や写経はもちろん、山行、水行、週末を中心にカヌー体験も可能(別料金、参加は4名以上)とか。
また、命の尊さを知るプログラムとして調理体験が用意されているのも特徴的です。
ほかにも、春はタケノコ掘りや近隣農家と提携した収穫体験など、お寺の歴史や佇まいだけでなく、
その環境を丸ごと体感できます。
「特別なものはないけれど、地方だからできる田舎体験が、
ここの良さではないでしょうか」と言う玉川弘信住職。
宿坊を地域活性の拠点としても考えているからこそ、ここでは宿泊と共に地域を学ぶことができます。