奈良県吉野山。
そこは修験道、南北朝など数々の歴史に彩られ、「紀伊山地の霊場と参詣道」として2004年にユネスコ世界文化遺産に登録されている地です。
また、春は桜、初夏の青紅葉に秋の紅葉、冬の雪景色と、一年を通して表情豊かな自然が迎えてくれる、関西随一の観光地でもあります。
その吉野を望む高台にあり、海外からも人が訪れる宿坊が「宝塔寺」。
近鉄電車の大和上市駅から小径をしばらく上ると急に空が広くなり、目の前には仏舎利塔。
境内にカフェも営む建物があり、そこが宿坊として多くの人を受け入れています。
宿坊の利用者は、8割近くが外国人。しかも連泊する人が多いのも特徴です。
理由は、受け入れる際の柔軟な対応と、利用して体感する地域の人との触れ合いです。
寺島法瑞住職が「うちは、休みに来てほしい場所です。
ですから、どのようなご希望をお持ちなのか、事前にしっかり聞くようにしています」というように、宿泊前のコミュニケーションを徹底。
宿の設備、環境、食事について説明し、納得してもらったうえで訪れてもらうようにしています。
「宿坊だから仏教体験を、というのではなく、それらはあくまでご希望があれば。まずはゆっくりしてもらえないと」。
事前コミュニケーションを担当するのは奥様の誉知子さん。
宿坊業務を受け持ちながら、同じ建物でカフェを運営、フラワーアレンジメント教室も開催しています。
この2つは、地域の人達にも好評で、ゆえに宝塔寺は地域でコミュニケーションの場としても機能しています。
時には地域の人と宿坊利用者、ご住職夫妻とで夕食会が行われることも。
「気が済むまで滞在してもらえる宿坊」を目指すからこそ、訪れる人に合わせた展開をする。
それが魅力となり、世界中から人が訪れる場となっているのです。